第71回日本生化学会近畿支部例会

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学会発表
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第71回日本生化学会近畿支部例会

学会発表

二重鎖DNA導入表皮老化細胞モデルの作成

株式会社セプテム総研　基盤研究室　相生章博
Frederick National Laboratory for Cancer Research, Applied and Developmental Research Directorate　今道友純
北海道科学大学　薬学部　柏倉淳一
大阪工業大学　工学部　芦高恵美子

＜発表内容の概要＞
高齢化社会において老化あるいは抗老化の研究は注目度が増している。老化細胞の蓄積が個体あるいは臓器の老化に密接に関係していることからin vitroでの細胞老化研究や抗老化物質の探索は重要である。しかし，細胞老化研究の端緒となったHayflick & Mooreの研究が示したように老化細胞の特徴は細胞分裂の停止であり，特に抗老化物質探索で十分な細胞数を確保するためには膨大な設備と費用が必要である。そこで，我々は発生過程におけるマウス胚線維芽細胞で新規の老化細胞マーカーとして報告された二重鎖DNA (dsDNA)を分裂能を有している正常ヒト表皮角化細胞 (NHEK)に導入して細胞老化の誘導を試みた。通常のNHEKの培養では継代数5（P5）以降で老化細胞マーカーであるSenescence Associated-β-Galactosidase (SA-β-Gal)の有意な発現が認められるが，P3，P4ではその発現は限られている。P4のNHEKに90bpのdsDNAを導入すると有意なSA-β-Galの発現亢進が認められた。さらに，老化細胞に特有の分泌現象であるSenescence-Associated Secretory Phenotype (SASP)に含まれる炎症性サイトカイン (IL-1α, IL-6, IL-8, TNF-α)の発現量の亢進，老化細胞マーカーp16INK4Aの発現の亢進，遺伝子損傷時に発現するγ-H2AX陽性細胞の増加，分裂している細胞に発現するKi67陽性細胞数の減少が観察された。以上のことから，dsDNA導入によって老化細胞マーカーの誘導が惹起されていることが明らかになった。さらに，老人性乾皮症で減少することが報告されているセラミドの合成酵素CerS3のmRNA発現量がdsDNA導入細胞で減少していることも明らかになった。以上の結果は，NHEKにおいてdsDNAの細胞内への導入が細胞老化を誘導し，老化細胞モデル作成の手段となることを示唆している。